『鍵のない夢を見る』辻村深月
言わずと知れた直木賞受賞作です。
言わずと知れたと前置きしておきながらなんですが、初めて読みました。
辻村深月さんの作品がそもそも初めてだったため、まずは賞も取ってるこの本から始めよう、
と安直な考えから手に取った一冊でありました。
それぞれが独立した話が5話収められています。いわゆる短編集というものですね。
いずれの話も主人公は女性です。悩める女性達のお話。
人の心はここまで生々しく表現できるものだったのか。
美味しくない料理をこちらに伝えようとされている時に
「これは美味しくないですよ」なんて事を言うのではなく、
「泥のような匂いが鼻に抜けてきます、苦味とえぐみが強烈で」みたいな説明をするわけでもなく、
その“味”そのものを口内に押し込んでくるかのような。
そんな感じのダイレクトさで人の心を表現されています。すごい。
小説の登場人物だから、ではなく、きっと現実世界でも誰しもが心の底にはドロドロとしたものを抱えて生きているのでしょう。
本当は誰に見せたくないそんなドロドロとしたものがダイレクトに表現されています。
だからこそ惹き込まれる。見たくないもの、見てはいけないものほど見たくなるあの感覚のような。
読み終わった時、そうだよな、それが人間なんだよな、と深いため息をついてしまうことでしょう。
読んでいると、心の奥の触れられたくない部分を鷲掴みにされているような、
そんな感覚に陥りました。それでも読み進めてしまうのが辻村さんの力なのでしょうか。
今回初めて挑んだ辻村作品でありましたが、大変良い出会いができたと思います。
2冊目もトライしてみたいですね。辻村さんの他の著書を調べてみることにします。
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