『舟を編む』三浦しをん
辞書とは、かくも奥深いものだったとは。
新しい辞書の完成を目指す辞書編集部、そしてその周りの人々の話。
辞書を作るのって大変なんですね。
確かに言われてみたらどう考えても大変なことなんですが考えたことなかった。
主人公は辞書です。『大渡海』という名の。
出版社の辞書編集部で働く荒木は定年を前にし、
辞書完成という自分の業を引き継がせるべく、営業部から引き抜いた馬締に語ります。
「辞書は、言葉の海を渡る船だ」
「ひとは辞書という舟に乗り、暗い海面に浮かびあがる小さな光を集める。
もっともふさわしい言葉で、正確に、思いをだれかに届けるために。
もし辞書がなかったら、俺たちは茫漠とした大海原をまえにたたずむほかないだろう」
「海を渡るにふさわしい舟を編む」
日本語大好き勢ならワクワクが止まらないですね。
小節の中身も終始、日本語好きの心をくすぐり、刺激します。
事実、読了後私はもっと深く日本語を知りたくなりました。
小節の内容もそうですが登場人物がとても素直。
誰しもが自分の仕事に誠実に、熱意を持って挑んでいる様子に胸を打たれる。
単なる仕事としてではなく「業」として自分の職業と向き合う、
その情熱がこの小説の芯となっています。熱血小説。
辞書が完成するまでの工程もとても興味深い。
この本を読まない限り、辞書編集部の仕事内容なんて知る由ありませんでした。
学生時代によんでいたら辞書編集部への就職を目指していたかも。
文章量の割に時間はかからず読むことができます。
それもみんなが素直だからなのではないでしょうか。
“働く”とはどういうことなのか、自分の仕事に真摯に向き合うとは、
そんな問いへのヒントとなる1冊になりそうです。
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