『いつか記憶からこぼれおちるとしても』江國香織
前回記事で紹介した本は大学生についての話でしたが
今回はもう少し若くなり女子高生が出てくるお話です。
6編の作品からなる短編小説集。
それぞれの話の主人公はいずれも女子高生。
裕福な家庭の子が多い、同じ私立女子高に通う女子高生達。
彼女らの若さ、故の美しさ、儚さ、そして強さが
江國香織らしい淡々とした、美しい日本語で紡がれています。
女子高生って最強無敵の完全体だと思っていたんですが、そんなことはない。
内面に秘める孤独や葛藤、本人すら気付いていないかもしれない悩み等。
そんな不安定な部分がありありとそしてさりげなく描かれている作品です。
彼女らにとっては特段何もない普通の日常。
いつか記憶からこぼれおちてしまうのでしょう。
僕は女子高生だったことはないのですがこの作品を読んでいると
自分が女子高生時代に戻ったかのような感覚に陥ります。
短編集ということもあり気軽に読み始められる1冊。
レモン味炭酸水のようにさらっといかがでしょうか。
今回の記事はちょっと女子高生女子高生言い過ぎましたね。
余談ですが、好きな作家を聞かれて「江國香織」と答える女の子、僕は好きです。
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『砂漠』伊坂幸太郎
「俺たちが立ち上がるしかないでしょう?学生の俺たちが。パンクロックの精神はね、馬鹿な学生が引き継ぐしかないでしょう」
大学入学直後の飲み会で、遅れて参加した西嶋がみんなの前で熱く、暑苦しく、語ったところから物語は始まる。
僕(北村)の視点で描かれ、北村・鳥井・南・東堂・西嶋の5人がそれぞれ互いに影響しつつ成長していく愛あふれる青春友情ストーリー。
この物語、視点こそ北村からのものだが主人公は西嶋。とにかく熱いこの男、カッコ悪いというカッコ良さを持っている。
パンクロックの精神を引き継ぎ、その気になれば砂漠に雪を降らせることだって余裕でできると豪語し、世界平和のために平和(ピンフ)を作り続ける。
僕の中では西嶋のイメージはサンボマスターの山口さん。西嶋の熱い語りと山口さんの熱いMC、完全に一致します。
その他登場人物もそれぞれ愛すべき人間味あふれるキャラばかり。
若さとは正義である。学生時代を終え、砂漠の中でひいひい言ってる僕からしたらそう思わずにはいられません。
そんな5人が若さゆえの熱量で、若さゆえの勢いに任せ、若さゆえの過ちを犯し、若さゆえの成長をしていく。
青く不器用な彼らが過ごす大学というオアシスでの4年間。
波乱万丈とまではいかなくとも山あり谷ありの学生生活を過ごしながら、彼らは社会という名の砂漠へ着実に歩みを進めていきます。
まだ見ぬ大学生活に思いを馳せ明日の受験勉強の力になるような、または、
がむしゃらに突き進んだ、あるいは冷めてスカしていた学生時代を思い返させるような、
そんな作品であると言えるでしょう。
心温まる学園ドラマかと思いきや熱く心揺さぶられる青春パンク!そう、この作品こそがパンクロックなのである。
伊坂幸太郎氏らしさはありつつも伊坂色は強くないため、伊坂幸太郎作品の1冊目としても良いかと。
不可能を不可能だからと諦めてしまうのか、そんなことはない可能だ本気になれば余裕だと信じ行動し続けるか。
不可能を可能にする奇跡は、きっと前者を選ぶ人には起こりませんよね。
映画化されるとしたら主題歌はぜひともサンボマスターで。
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